3月21日(土)午後、貸会議室オフィスゴコマチ(京都市)にて、民族文化研究会関西地区第23回定例研究会が開催された。今回の定例研究会は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外部参加者の出席を認めず、規模を縮小した内部研究会として開催された。
報告者は望月浚渫氏と竹見靖秋氏。
まず、望月氏が、「日本の相互扶助システム ― 無尽講あるいは頼母子講」と題し、近世における金融制度である無尽講(頼母子講)について考察した。無尽講とは、金銭や物品を加入者の間で支出し、あらかじめ決定しておいた規則に基づき、それらの金銭や物品を分配する制度である。無尽講は、その分配システムによって、保険から金融、さらには賭博まで多様な性格をもつが、本報告では相互扶助という側面に着目する。
続いて、竹見氏が、「伊勢周辺の霊祭系教会」と題し、伊勢市の周辺にある祖霊社(祖先の御霊を祀る祠宇)の現状を概観した。明治期、これまで仏教が独占していた葬儀・祖先祭祀の領域へと、神道が進出することになった。廃仏毀釈によって、これまでの地域の菩提寺が消失し、神道が葬儀・祖先祭祀の新たな担い手として期待されることになったのである。
こうした葬儀・祖先祭祀という役割を果たすため、神葬祭や祖霊祭祀に特化した「霊祭系教会」が出現した。とりわけ、伊勢神宮が教派神道の特立の際に設けた「神宮教」(のち「神宮奉斎会」)傘下の神道教会が、こうした性格を強くもつ。本報告では、神宮教系列である伊勢市周辺の「霊祭系教会」の現状を概観することで、神道を基軸とした地域に根付いた祖霊祭祀の在り方を検討した。
その後、里見岸雄『討論天皇』を輪読した。