「御代替わりに際して~あらためて国体とは何か」― 金子編集長が三島由紀夫研究会で講演〔4月19日〕

4月19日、アルカディア市ヶ谷で三島由紀夫研究会の第二百七十七回公開講座が開催され、本誌の金子宗德編集長が「御代替わりに際して~あらためて国体とは何か」と題して講演した。

里見岸雄は、『万世一系の天皇』において、皇位を階級の違いを集約する一点と把握しているが、今回の御譲位に伴う皇位継承を巡る安倍内閣の対応は多くの問題を孕んでいる。とりわけ、譲位を「退位」と「即位」に分割し、4月30日に「退位」し、5月1日に「即位」するとしたことは将来に禍根を残しかねない。

戦後の皇室典範には、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」としか規定がない。陛下が御譲位のご意向を示された後、安倍内閣は同条文に付随する形で「特例法」を成立させた。つまり、皇室典範そのものの改正ではないために、特例法の条文も本則に倣わねばならなくなった。そのため、特例法では「天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、皇嗣が、直ちに即位するものとする」と定められた。この法律に基づき、政府は4月30日の午後に退位儀礼を行い、5月1日の午前に即位儀礼を行うとしている。これによって法理上は空位の期間はないものの、儀礼上空位の期間ができてしまうのは大いに問題だ。例えば4月30日24時の直前に退位儀礼、五月一日零時の直後に即位儀礼ということもできたはずだが、そうした空位期間がないようにという配慮よりも政治家や官僚の事務都合が優先された形となった。また、「令和」の元号じたいは聖徳太子の十七条憲法を想起させるもので素晴らしいと思うし、「国民生活への配慮」という観点から内定段階で事前公表をすることは容認しうるにせよ、改元の政令に今上陛下の御名御璽を再び頂く形となり、一世一元の制が崩れてしまったことは遺憾と言わねばならない。

そうした手続き面での不備を論うことも重要だが元号に関する社会的意識に目を向けねばならない。教鞭を執っている大学の学生にアンケートを取ったところ、その多くが日常的に元号を使っておらず、使っている者も役所関係の書類上使わなくてはならないので使っているという程度であった。さらに皇室においてすら眞子内親王の婚約会見で西暦を使用するなど、元号に対する意識が薄れていることが残念ながら明らかになった。「令和」の元号の考案者とも言われている中西進氏は「元号は天が決めるものだ」という趣旨の発言をしているが、まさに元号は人知を超えた意志によって定められていると理解すべきで、元号制定の手続き以上に元号に関する意識喚起が重要だ。

また、今後の課題として、皇位の安定的継承のために女系天皇を認めるか否かという議論があるけれども、この問題は歴史的事実・論理的可能性・現実的可能性の三点から考えられるべきだ。個人的には女系論の論理的可能性を排除すべきではないと考えるが、現時点で早急に判断するのは難しい。言うまでもなく、眞子内親王殿下の御婚約をめぐる騒動が解決していないからだ。この問題は、旧皇族末裔に皇籍を付与すべきという対案と合わせ、最終的には天皇陛下の聖断を仰ぐべき事柄であるが、現時点では聖断を下せる状況ではないだろう。ただ、今回の騒動で明らかになったのは、たとえ皇籍を離脱されるにせよ、皇族女子の婚姻相手は然るべき方でなければならないということだ。旧皇室典範には、「皇族女子の婚姻相手は皇族または華族に限る」という規程があった。それを踏まえるならば、皇族女子の婚姻相手も皇族男子の場合と同じく皇室会議等での承認を経ることが望ましいと考える。

國體に関する問題はこれだけではない。その根幹に関わる文化的・民族的な次元で、グローバル化やIT化が危機をもたらすのではないか。いままでは基軸として「文化」があったから通用したが、グローバル化やIT化でその基軸じたいが崩壊しかかっていると指摘した金子氏は、もちろん現在の国民国家が人類共同体の最終形態とは言い切れず、國體論も進化が求められていると結んだ。〔小野耕資〕

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