「超限戦」に備えよ ― 東都で渡部悦和氏が講演〔9月27日〕

9月27日、千田会の主催により、文京シビックセンターで渡部悦和氏(元陸上自衛隊東部方面総監・日本安全保障戦略研究所上級研究員)が「現代戦争論-超『超限戦』」と題して講演した。

東京大学工学部を卒業した渡辺氏は陸上自衛隊に入隊。退官後、ハーバード大学のシニアフェローとして渡米。ジョセフ・ナイやグレアム・アリソンの下で米中による覇権闘争の実態を研究する中で、中国が展開する「超限戦」に備えることの重要性を痛感した。「超限戦」とは、文字通り「すべての境界と限度を超えた戦い」のことで、目的のためには手段を選ばないものだ。また、その領域も、倫理・法・基本的人権など多岐に亘る。中国は、あらゆる分野において「超限戦」を展開しつつあるが、とりわけ情報戦・サイバー戦という分野では顕著である。

「超限戦」が展開されるのは、戦争・紛争の局面に限らない。平和な状況を利用して「戦わずして勝つ」ことが至上である。まさに、平和な時こそ攻撃のチャンスということだ。にもかかわらず、我が国は「専守防衛」の原則に縛られ、自衛隊が実力を発揮できない状況にある。

現代の国際競争は、核戦争やテロ・ゲリラのような「軍事」、情報戦・宇宙利用といった「軍事+非軍事」、金融・貿易・資源・メディアといった「非軍事」の三つのカテゴリーに分けられるが、それらを総合した全領域作戦(All Domain Operation)を遂行するという視点に立たねばならない。情報戦は現代戦において最も重要なものであり、あらゆる分野で行われているが、特にSNSを利用した影響工作やAI(人工知能)の軍事利用に中止せねばならない。

「超限戦」は、宇宙空間でも既に行われている。いくら我が国のJAXA(宇宙航空研究開発機構)が「宇宙の平和利用」を強調したところで、実際には、人工衛星の破壊・通信の妨害などが想定されており、ロボット技術も応用されるだろう。電磁波領域での戦い、とりわけ核を使用したEMP攻撃は、アメリカはやらないと言っているが、中国はやると言われている。現に、人民解放軍は宇宙開発にも関係しており、宇宙を利用した指揮・統制・通信・情報・偵察などの軍事分野にも大きな影響を与えている。

中国共産党には、中央直属機関として中央統一戦線工作部があり、積極的な対外活動を展開している。大学・文化関係はもとより、マスコミは中国共産党の強い影響を受けている。また、中国製の兵器(輸送機・戦闘機・無人機・シーハンターなど)は先進国のものと極めて類似しており、技術やデザインの盗用も行われている。

こうした「超限戦」に対抗するためには、軍事的手段と非軍事的手段、見える戦いと見えない戦いなどあらゆる分野での戦いに備えなければいけない。その点、我が国おいては国産装備が減りつつあるが、大改革が行われつつある中国の動きと比した時、あまりに心もとない。我が国も、自国生産を維持する必要があろう。また、科学技術強国を目指して、ITやAIに力を入れ、デジタルシルクロードを開拓している中国に対抗するため、AIなどの最先端技術における軍民融合(中国は既に取り入れている)を進め、先端技術の研究開発費を着実に増加することが必要である。

「超限戦」を展開する中国などに対して、我が国は極めて脆弱な状況にある。こうした状況を打破すべく、憲法改正を含め、あらゆる分野における制約を排除することが重要である。〔千田会東京本部事務局・渡辺雅仁〕

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