神道や東洋を巡る様々な思想的営為 ― 京都で民族文化研究会〔6月29日〕

6月29日午後、貸会議室オフィスゴコマチ(京都市)にて、民族文化研究会関西地区第14回定例研究会が開催された。報告者は、半木糺氏と湯原静雄氏。

まず、半木氏が、「曽和義弌『日本神道の革命』を読む」と題し、昭和期に活動した政治家・神道家である曽和義弌の神道観を、その著作である『日本神道の革命』に基づいて検討した。曽和は、戦前に大阪府会議員を経て衆議院議員を務めたが、在職中は神社行政問題に取り組み、また優生思想に神道の立場から反対論を唱えるなど、神道信仰に立脚した政治家として知られていた。曽和が、こうした自身の神道信仰を独自の神学に昇華させ、晩年になってまとめたのが、ここで取り上げる『日本神道の革命』である。曽和の神道観は、神道を徹底的に「霊性の進化」の視座から捉えたもので、また、天照大御神と素戔嗚尊を姉弟神ではなく夫婦神とするなど記紀の一般的な解釈にも異を唱えるなど、極めて特異なものだった。しかし、従来の神道を徹底的に否定し、完全に独立独歩で自身の神学的立場を形成した曽和の神道観は、新たな神道の方向性を探る上で参考になると結論づけられた。

続いて、湯原氏が、「『東洋』概念をめぐる津田左右吉・小野清一郎論争 ― 民族文化の視座に注目しつつ」と題し、「東洋」概念をめぐって津田左右吉と小野清一郎が展開した論争を検討した。この論争は、アジア主義者による統一的文化圏としての「東洋」概念に異を唱えた津田左右吉に、小野清一郎が反論を提起することで発生したものである。津田は、日中両国の巨大な文化的差異を挙げ、日中を包含する「東洋」という統合された文化圏は存在しないと主張した。この見解に対し、アジア主義的な立場に立脚する小野清一郎は、東洋文化圏の存在を肯定し、津田批判を展開する。この論争が興味深いのは、単なる東洋文化圏の存否のみならず、民族と文化の相関関係にまで、問題の射程が拡張されたことだ。これは、文化圏としての東洋が存在するか否かを論じるのは、文化は個別的な民族を離れ、ある超国家的・超民族的な国際秩序(この場合は東洋)によって展開されるのか、それとも、あくまで個々の民族の具体的な生活のなかから紡ぎ出されるのか、論じるのと等しいためである。本報告では、この論争を分析することで、日本文化が東洋文化に対し占める位置を明らかにすることが目指される一方で、こうした民族と文化の相関関係という根源的な課題についても考察した。

その後、里見岸雄『討論天皇』の輪読を行った。〔湯原静雄〕

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