集団的自衛権を巡る問題の本質

『国体文化』平成26年6月号・巻頭言

安倍晋三首相は、集団的自衛権の行使を禁じた政府見解の修正に前向きだ。これまでの政府見解では、自国が他国から攻撃を受けた場合には反撃できるけれども、同盟国が他国から攻撃を受けた場合には反撃できぬとされてきた。朝鮮半島や台湾海峡で戦闘が発生し、その過程で米国軍が攻撃されたとしても、自衛隊は見て見ぬふりをせよといふことだ。このやうな事態に独力で対応する能力が自衛隊にあるならともかく、それが不可能な現状においては、日米安全保障条約の範囲内で米国軍と共同作戦を展開し得るやう集団的自衛権の行使を容認するよりほかに方途はない。

こんな当たり前のことが出来なかつたのは、云ふまでもなく自衛権の行使に制約を課した現行憲法第九条が存在するからだ。本来であれば、(核武装を含め)如何なる手段を用ゐても自国を防衛できるやう憲法を改正すべきだが、国会で発議することすらできぬ現状においては、政府見解の変更を通じて実質的な空文化を図るよりほかに術はなからう。連立政権を組む公明党は従来の見解に固執してゐるやうだが、安倍首相は同党との連立政権を解消してゞも不合理な現状を打破すべきだ。

問題は、集団的自衛権の行使が可能となつた後である。同盟国として第一に想定されるのは米国だが、その米国はこれまで何度も国際金融資本の意を受けて世界平和に対する脅威を捏造し、戦争を仕掛けてきた。「八紘一宇」といふ建国の理念に違背せぬやう、我々は米国をはじめ他国に翻弄されぬ強固な国内体制を構築せねばならない。安倍首相はともかく、自民党の中には他国の利益を代弁する者も少なくない。独立国家に相応しい国内体制の構築を同党に期待し得ない以上、日本の正気を体現する政治勢力の形成は急務であらう。
(金子宗德)

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