グローバル化と重国籍

「国体文化」平成28年11月号巻頭言

先に行はれた民進党代表選挙の最中、候補者の一人である蓮舫参議院議員の重国籍疑惑が浮上した。

かつて、日本国籍を生まれながらに与へられるのは父親が日本国民である場合に限られ、中華民国の国籍を有する父親と日本の国籍を有する母親との間に生まれた彼女は中華民国の国民であつた。その後、昭和五十九年に国籍法が改正された結果、母親のみが日本人であつた場合でも子の日本国籍が認められた。そのため、翌年に彼女は日本国籍を取得したが、中華民国の国籍を放棄しなかつたため長らく重国籍状態だつた。その上、この疑惑に対する彼女の説明は二転三転した揚げ句、代表戦における勝利が実質的に確定した時点で漸く重国籍状態であつたと正式に認める始末であり、国民の代表たる国会議員の適性を欠くと云はざるを得ない。

そもそも、国籍とは個人が特定の国家の構成員であることの証明であり、国民と非・国民を区別する基準でもある。また、この地球上の陸地が(南極大陸を除き)二百あまりの国家のいづれかに帰属してゐるといふ点からして、如何なる個人も必ずいづれかの国家の構成員たることが望ましい。さらに、それぞれの国家が対外的に主権を有し、潜在的な敵対可能性を孕む以上、複数の国家に帰属することは不適切である。

国籍の得喪は国家主権に基づく行為であり、日本国政府が重国籍者に他国の国籍を放棄するやう催告はできても放棄を命ずることはできぬ。グローバル化が進む今日、国際結婚などを契機とする重国籍者は増えることはあつても減ることはないと思はれ、重国籍を容認するのが現実的であらう。

たゞ、その場合でも、潜在的な敵対可能性を孕む複数の国家に属する人物が一方の国民の代表として権限を行使することは当該国民の利益を損なふ可能性があるため、国会議員や地方議員あるいは自衛隊員や警察官への就任は禁止されて然るべきだらう。
(金子宗徳)

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