外国人政策に関して安倍首相に望む

「国体文化」平成27年12月号 巻頭言

 去る十一月七日、河野太郎・行政改革担当大臣は、沖縄県名護市の万国津梁館などで開催された国際会議「サイバー3 カンファレンス・オキナワ2015」において、安倍政権が目標とする「名目GDP(国内総生産)六百兆円」達成のため、「外国からの労働力をどうするか、そろそろテーブルの上に載せ、議論を始める覚悟が必要だ」などと発言したといふ。

 安倍首相は以前から移民政策を採らないと何度も明言し、「『戦後最大のGDP六百兆円』の実現」など「一億総活躍社会の実現」を謳つた閣議決定〔十月七日〕においても、「高齢者も若者も、女性も男性も、難病や障害を抱へる人も、誰もが活躍できる社会を目指し、女性が輝く社会の実現、多様な働き方改革などに取り組む」とあるだけで外国人労働者の受入れについては何も記されてゐない。河野大臣の発言は個人としての意見か、あるひは「高度人材の受入れ」として「移民」受入れ政策を実質的に推進してゐる内閣の本音か、任命権者たる安倍首相は説明する義務があらう。

 「移民」受入れの是非と合はせて考へておかねばならぬのは、「難民」に対する対応だ。シリア内戦に端を発し、多くの「難民」がヨーロッパに流入してゐる。その受入れについて安倍首相は慎重な姿勢を示してをり、この点については評価したい。政治的迫害により祖国を追はれた人々を庇護することは人道的見地から当然であるにせよ、経済的困窮を理由として自発的に祖国を離れた者が「難民」を偽装する場合も少なくない。自称「シリア難民」の中にもアラビア語を話せぬ者が多く、ドイツなどは受入れに慎重な姿勢を取るやうになったといふ。加へて、テロリストが紛れ込んでゐる可能性も否定できぬ以上、今後とも如何なる国際的圧力が掛からうとも主体性を持つて「難民」受入れの是非を判断して貰ひたい。
(金子宗徳)

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