新型コロナウイルスの流行があぶり出したもの/宮田昌明

政権の末期症状

2月29日、安倍首相は新型コロナウイルスの流行を抑えるため、3月2日から全国の小・中・高等学校の2週間の臨時休校を要請した。1月下旬には国内での感染拡大が一般に懸念されていただけに、政府による対応としては遅かったが、厚生労働省の無為無策や報道機関の無責任ぶりに照らし、おそらく妥当な決断であった。

新型コロナウイルスに対する政府や厚生労働省の対応が緩慢であったのは、危機感の欠如ばかりでなく、中国に対する配慮からのようでもある。真偽は不明であるが、中国から大事にしないよう要請があったともいう。

昨年末より、自民党議員によるカジノ問題での汚職や公職選挙法違反容疑に加え、習近平の国賓待遇問題があり、さらに2月18日に発表された昨年10~12月期の国内総生産(GDP)は前期比1.6%、年率に換算して6.3%(後に7.1%に修正)の減少となった、景気後退が明確になっている中で強行された消費税増税の結果である。

政府は、増税によって国民に負担を押し付けながら、国民生活に直結する感染症対策を怠った。増税にしても、コロナウイルス対策にしても、財務省や厚生労働省の無能な官僚に対応を委ねた結果であろう。

これだけの失態が続けば、通常なら政権倒壊は避けられない。国民生活の危機に何の対策もないなら、公務員を削減し、減税してくれた方が、国民にとって負担は軽くなる。

学校の臨時休校決定とその後の仙台市や愛媛県などでの感染者の確認により、事態の深刻さが再認識され、汚職問題など忘れ去られた感もある。しかし、事態が沈静化した後、改めて今回の責任が問われなければ、責任感欠如の風潮をさらに助長しかねない。

愚者を動かす

学校の臨時休校の決定に一部報道機関や野党は強く反発した。唐突な決定、効果は疑問、子供は重篤化しない、といった批判がなされた。特に菅直人の批判は醜悪で、いずれも売名や無責任な批判のための批判に過ぎなかった。

数々のデマも流布された。中でも悪質なのが、政府は感染者数を隠蔽するために検査を拒否している、という、立憲民主党やマスコミ関係者が流布したデマであった。

しかし、現時点で検査の精度は高くなく、検査希望者全員に検査を実施することは無意味なばかりか、医療機関に過大な負担を与え、治療が必要な患者への対応を阻害しかねない。3月1日、国立感染症研究所は、デマ報道を否定し、強く抗議している。

政府はまた、症状の軽い患者に自宅療養を求める方針を発表したが、これについてもマスコミは非難した。しかし、これも重篤化した患者の治療を優先しながら、感染拡大を阻止するため、専門家の提言を受けて発表したものであった。

軽い風邪の症状の患者まですべてを新型コロナウイルスの感染者と想定するのは、非現実的である。

中には中国や韓国の対応を高く評価する報道もあったようであるが、韓国では日本以上に流行が深刻化し、軽症感染者の受け入れで医療機関が手一杯となり、重傷者がかえって治療を受けられない事態まで発生したともいう。

政府による学校臨時休校の決定は、その影響の大きさから、何より国民に危機感をもたせたところに、効果があった。世の中を動かすには、鈍感な人々を動かし、あるいは愚昧な活動家に場当たり的な醜態をさらさせるほどの衝撃が必要ということなのであろう。

新型コロナウイルスの流行により、マスクや消毒用アルコールのみならず、トイレットペーパーまで品薄となった。オイルショックさながらであるが、マスコミも品薄を煽り立てた。

その一方で、病院でさえマスクが不足している中、兵庫県は中国にマスクを百万枚寄贈した。無能、無責任、偽善の至りであろう。

愚かといえば、中国に忖度して荒唐無稽な発表を繰り返したWHOや、感染者を乗せた旅客船への対応をめぐって日本を非難しながら、その後、自国内の感染者を激増させた欧米諸国とその報道機関もである。

ウイルスを日本にばらまいたのは中国人感染者である。にもかかわらず、自分たちは無関係と考えた欧米諸国の思考回路は理解不能であり、WHOや欧米報道機関は、マスクの有効性にまで疑義を唱えているようである。こうした愚昧さが、社会に与える損害を拡大するのである。

不況の再来か

安倍内閣は、デフレ脱却を目標に掲げ、大規模金融緩和を実施してきたが、所期の目的を達成できないまま、不況を迎えようとしている。デフレの原因に関する分析が誤っていたためであろう。

平成を通して続いたデフレの原因は様々であるが、一般に指摘されない重要要因に、日本企業の中国進出がある。中国で安い製品を生産して輸入し、製品が溢れていて、デフレが解消する方が異常であろう。

今回のウイルスの流行により、自動車などの部品やキッチン、トイレ周りなどの内装関連の在庫不足がすでに深刻化しているという。中国産マスクの輸入が途絶したことも、マスク不足の要因であった。

日本の低成長に関連して、日本の労働生産性の低さがしばしば指摘される。

これも統計的にはデフレが影響した結果であるが、日本の場合、少子高齢化に伴う福祉事業の拡大に加え、共産党をはじめとする野党や労働組合、左翼教員、学者、弁護士など、生産性がないどころか、企業活動を妨害する勢力の影響も小さくないであろう。

安倍内閣は、デフレや経済成長の阻害要因を除去する上で、ほとんど成果を挙げられなかったのである。

その一方で、インターネットやスマートフォンの普及は、国民の旧来の娯楽や消費行動を大きく変えた。さらに断捨離、片付け、ミニマリストといった、不要物を処分し、最小限の所有で快適に過ごそうという考え方の登場も、生産と消費を中心とする経済活動に少なからず影響しているであろう。

日本経済の活性化には、旧態然たる景気対策ではなく、新しい国民生活に対応し、国民の生活満足度を上げる対策が必要であろう。

その点で政府の対策には限界がある。安易な所得再分配は社会の活力を損なわせる。期待はできないが、減税や無能公務員の整理と、デマに踊るような国民の意識改革がまず必要であろう。

(続きは本誌にてご購読ください)

▽国体文化 令和2年4月号(印刷版)
kokutaigakkai.com/store

▽国体文化 令和2年4月号(電子版)
www.amazon.co.jp

宮田昌明(みやた・まさあき)文学博士(京都大学)。一燈園資料館「香倉院」勤務。里見日本文化学研究所客員研究員。

関連記事

  1. 国家戦略特区といふ蟻の一穴

  2. 転換点に立つ我ら ― コロナウイルスが突きつけるもの/金子宗徳

  3. グローバル化と重国籍

  4. 「国体」の語をもてあそぶな!白井聡氏の『国体論 菊と星条旗』を斬る(後編)

  5. 【本誌新連載】新・不都合な日本語「韓国」

  6. 「日韓合意の歴史的意義」

  7. オウム真理教が問い掛けるものーー「個人」の死を超えるものとしての「国体」

  8. 「国父」の死とタイ社会の将来(樋泉克夫)

  9. 中国からアジアを解放する21世紀の八紘一宇とは 国際戦略家・石井英俊氏に聞く

今月の人気記事





PAGE TOP