《時の流れ研究会》が「『皇位の安定的な継承を確保するための諸課題』についての見解」を発表〔4月19日〕― 『神社新報』〔4月27日〕の報道より

文仁親王殿下の「立皇嗣の礼」が予定されていた4月19日、神社新報社により設立された《時の流れ研究会》が、①適正規模の皇位継承資格者を確保するため、元皇族の男系男子孫で適任者が、皇族の身分をあらたに取得されることを可能にすること、②皇族間の養子を容認し、現宮家の将来的な存続を可能にすること、を骨子とする「『皇位の安定的な継承を確保するための諸課題』についての見解」を発表した。

その主要部分は、以下の通り。

【Ⅰ】基本方針の確認

(一)皇位継承の「基本原則」 ― 皇室の伝統と憲法・皇室典範による

日本国憲法第二条の「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」と、皇室典範第一条の「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」といふ規定を遵守する。この、「皇位は、世襲のものであつて」、「皇統に属する男系の男子が、これを継承する」といふ規定は、皇室の伝統を踏まへて定められてゐる。
これが、変へてはならない皇位継承の「基本原則」である。

(二)皇位継承順序の「基本前提」

皇室典範・同特例法により確定してゐる、現在の正統な皇位継承者である継承順序第一位の秋篠宮皇嗣殿下と同第二位の悠仁親王殿下、及び第三位の常陸宮殿下への継承順序は変へられない。
これを、当面する検討にあたっての「基本前提」として確認する。

【Ⅱ】具体的な方策の必要性と眼目

悠仁親王殿下から先の世代を考へると、皇位の安定的な継承を確保するためには、さらに皇位を継承するにふさはしい「皇統に属する男系の男子」の資格者を確保する具体的な方策を、現時点において検討し、制度を再構築する必要がある。
この場合、最も重要な眼目は、皇統の歴史的な正統性(皇統に属する血統)と、法的な正当性が保持されることである。

【Ⅲ】「附帯決議」に関係する主要な論点についての見解

(一)敬宮愛子内親王殿下の皇位継承の可能性について

敬宮愛子内親王殿下が、今上陛下の次に皇位継承されることは、先に述べた皇位継承の基本原則および皇位継承順序の基本前提からして想定し得ない。さらにすでに確定してゐる継承順序を変へることは、大きな混乱を引きおこすもととなる。
また悠仁親王殿下が即位されて以降、万一、男子がをられない場合でも、愛子内親王殿下が皇位継承されることは、悠仁親王殿下より五歳年長であることなどを勘考すると、現実的に想定しがたい。
なほ、愛子内親王殿下が元皇族の男系男子孫と婚姻された場合、それを機に皇族の身分を取得した皇族男子の妃として、皇族の地位にとどまられることは検討され得よう。

(二)女性天皇(男系)について

ここで想定する女性天皇の具体的な対象者は、悠仁親王殿下が将来結婚され、男子がをられない場合の内親王となる。
男系の女性天皇は史上存在し、基本原則の例外として可能性を検討する余地はありうる。しかし男系男子の皇位継承者を確保すれば、その必要性は無くなる。また一代限りの女性天皇では、皇位の安定的な継承を確保することにはならない。

(三)女系天皇について

女系天皇(ここでは男系の女性天皇と皇統に属さない男性との婚姻による子が即位した場合の天皇をいふ)は、皇統史上全く存在せず、かつ皇位継承の基本原則を逸脱し、認めがたい。

(四)「女性宮家」の創設について

「宮家」は、歴史的に男系男子の皇位継承資格者を確保して、皇統を維持する役割を担ってきた。これに対し、いはゆる「女性宮家」とは、皇族女子が皇族以外の男性との婚姻後も皇籍を離脱されずに皇族の身分を保持し、当主となる宮家を意味すると考へられる。
このやうな「宮家」の創設は皇室史上前例がないこと、また、その女性当主に皇位継承資格を認めることはあり得ないこと、皇統以外の夫や子が皇族となる、あるいはその可能性があることなど、さまざまな問題点を勘考すると認めがたい。

(五)女性皇族の「皇室のご活動維持」について

女性皇族が婚姻により皇籍を離脱された後、なんらかの称号を冠し、準皇族的立場で、皇室の諸活動の安定的な維持のために従事されることが可能となる方策は、別途、必要な検討事項となり得る。

右の敬宮愛子内親王殿下の皇位継承、女性天皇、女系天皇、女性宮家等の論点については、いづれも国民世論及び国会審議の対立・分裂を招く恐れがあり、ここで基本原則と基本前提を変へることになれば、日本国民統合の象徴としての天皇の権威と存在、皇位の正統性と正当性、ひいては皇位継承の安定性をも損なふことになりかねない。

【Ⅳ】必要な具体的な方策の提言

以上から、「皇統に属する男系の男子による皇位継承」といふ基本原則に則る、現時点における必要な具体的な方策は、左記の二点にしぼられる。そのために皇室典範特例法などを検討し、立法の整備を行ふ。なほ、これはできる限り早期に実現することが望ましい。

(一)皇統に属する男系の男子のふさはしい皇位継承資格者を確保する。

そのために、昭和二十二年、日本国憲法下で皇籍を離脱された旧宮家の元皇族の男系男子孫の中から若い適任者が、皇族の身分をあらたに取得されることを可能にする。
これは、左記の事由により、必要かつ妥当と考へる。
①悠仁親王殿下が将来ご結婚後、万一、男子がをられない場合の方策として。
②皇室に適正規模の皇位継承資格者を確保し、皇族の層を厚くするため。
③悠仁親王殿下を輔佐し、及び皇族として皇室の公的な諸活動を担ふため。
右によりあらたに皇族となられた方については、次の事が想定される。
①現在の後継男子不在の宮家の養子に入り、その宮家を継承する。
②将来、新宮家を創設したり、また男子がをられない宮家を継承する。
③現宮家の女性皇族と婚姻して、その家の当主となり、宮家を継承する。

(二)皇族間の養子を可能にする。

そのために、皇室典範特例法を制定して、皇室典範第九条(養子の禁止)と同十五条(皇族の身分の取得)の特例を認める。皇位の安定的な継承には、現行法では認められてゐない皇族の養子制度の容認が不可欠となる。
養子の最適な方法としては、皇族の身分を取得された元皇族の男系男子孫が、後継男子不在の宮家の養子に入り、将来、宮家を継承することが想定される。これは、現宮家存続の方途ともなる。なほ、あらたに皇族の身分を取得する決定には、皇族及び三権の代表者によって構成される皇室会議の議によることとする。

ここに示されている内容は、いわゆる男系護持派の主張そのままであり、改めて論評するまでもないが、興味深いのは同研究会の顔触れだ。
同紙の報道によれば、同研究会の会長は神社新報社の社長である高山亨氏〔乃木神社名誉宮司〕。その他、主な参画者として、葦津珍彦氏(故人)の高弟で憲法や皇室問題に詳しい田尾憲男氏〔神道政治連盟首席政策委員〕、有職故実に詳しく女性宮家の創設を主張していた所功氏〔京都産業大学名誉教授〕、憲法学者で女性宮家創設に反対していた百地章氏〔日本大学名誉教授〕の名前が挙げられている。記事にもある通り、その主張には大きな隔たりが存在する。皇位継承問題に関する国民的な合意を目指す上でも主張の総意を如何にして乗り越えたのかは興味深く、同研究会におかれては、結論だけでなく議論の過程を公開すべきように思われる。〔東山邦守〕

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