国家戦略特区といふ蟻の一穴

「国体文化」平成27年7月号 巻頭言

去る六月二日、「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案」が衆議院で可決された。この法案は「経済社会の構造改革を更に推進し、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動拠点の形成を図り、並びに地域の活性化を図る」〔内閣府地方創生推進室〕ことを目的として、特定の区域〔東京圏・関西圏・沖縄県・福岡市・新潟市・養父市(兵庫県)〕に限つて規制緩和を試みるといふものだ。経済成長を目指す安倍内閣にしてみれば、成功例を示すことで一層の規制緩和を推進しようといふのだらうが、この発想は様々な問題を孕んでゐる。

確かに、特区となつた区域での経済活動は活発化するに違ひない。とは云へ、同一の国家の中に複数の法制度が併存するといふ状態は「国家としての一体性」や「法の下の平等」といふ国民国家の理念に抵触せぬか。それでもなほ、敢へて特区制度を採用するといふ以上、国民全体の利益や幸福を底上げするものでなければならぬ。その点、過疎地における産業の振興を目指すものなら許容できようが、大都市に投資の成果が集中するやうなものであつてはならぬ。

さらに、今回の改正案を見ると、起業を目指す外国人の在留資格取得要件が緩和されたり、外国人メイドの在留が認められたりしてゐる。国家戦略特別区域及び区域方針〔平成二十六年五月一日閣議決定〕を見ると、「多様な外国人受入れのための在留資格の見直し」や「外国人向け医療の提供」などといふ文言が見られる。このまゝで行くと、特区が外国人移民受入れの抜け道となり、ひいては「国家としての一体性」を破壊する蟻の一穴となりかねない。
(金子宗德)

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