近現代音楽と俳諧系神道結社 ― 京都で民族文化研究会関西支部例会〔5月18日〕

令和元年5月18日午後、貸会議室オフィスゴコマチ(京都市)にて、民族文化研究会関西地区第13回定例研究会が開催された。

報告者は、中村龍一氏と竹見靖秋氏。

まず、中村氏が、「日本音樂を私達の生活に取り戻すために(第十囘) ― 近現代音樂」と題し、近現代の日本音楽を俯瞰した。洋楽の導入に圧迫されつつも、戦前期には浪曲をはじめとした伝統音楽が大衆の支持を得ており、また洋楽の覇権が本格化した戦後期も、日本音楽の復興運動が根強く継続されていると指摘され、伝統に準拠しつつ現代に合致した日本音楽の出現が待望されているとし、議論はしめくくられた。

続いて、竹見氏が、「神道芭蕉派の登場 ― 明治初年の宗教界と『俳諧系神道結社』」と題し、俳諧と神道の融合を企図した三森幹雄(写真)の宗教運動を概観した。明治期、宗教関係者を国民教化に動員する教導職が設置された際に、俳諧関係者も教導職に任命された。これは、江戸期の俳諧は、禅や石門心学への接近があり、「俳禅一致」などの概念も見られ、俳句は単なる文芸ではなく、そこに道徳的教訓や宗教的理念が見られるとする立場があり、こうした道徳的・宗教的側面が評価されたためだった。こうして教導職に就任した俳人である三森幹雄は、こうした俳諧の道徳性・宗教性を発展させ、自身の指導していた俳諧結社である明倫講社をもとに、「神道芭蕉派明倫教会」を教派神道の教団として立ち上げた。ここでは、上記の俳句の道徳的・宗教的側面が重視されると共に、芭蕉を祭る祠宇を設け、芭蕉を「花の本大明神」として信仰した。こうした三森らの立場は、正岡子規らの俳諧を純粋な文芸だとする立場が主流になるにつれ、いつしか忘却されることとなったが、俳諧と神道の接合を試みた特異な立場は、神道史において非常に興味深い現象である。

このあと、里見岸雄『討論天皇』の輪読会を行った。これまで、里見岸雄『天皇とプロレタリア』を輪読してきたが、今回からは同じ著者による『討論天皇』を輪読していく。

今回も活発な議論が交わされ、非常に盛会だった。

〔湯原静雄〕

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