8月26日夕方、曙町児童会館(東京都文京区)にて、王権学会の公開研究会が開催された。
発表者は評論家の江崎道朗氏とポール・ド・ラクビビエ氏(里見日本文化学研究所特別研究員)。
江崎氏の発表は、「ソ連・コミンテルンの対外工作とその研究動向」と題するもの。冷戦終結に伴うソ連崩壊後、ロシア政府から「リッツキドニー文書」(ソ連共産党)が公開されたことを皮切りにアメリカやイギリスも文書を公開。さらに、プーチンの粛清から逃れた旧KGBのヴァシリエフやミトロヒンが記したノートも公表され、ソ連共産党による秘密工作の実態が明らかになりつつある。それらによって、ソ連がアメリカにおいて種々の秘密工作活動―「アメリカ共産党結成」・「人民統一戦線工作」・「シンクタンク乗っ取り工作」・「国民運動の展開」・「政界工作」―を展開し、アメリカ政府の中枢部まで侵されていたことを、現代日本を例に挙げながら分かり易く解説した。続く、質疑応答において、インテリジェンス・ヒストリーという学問は冷戦終結後に様々な文書が公開されて盛んになったものであり、まだまだ様々な切り口―チャーチルからアメリカへの参戦圧力―が存在するとも述べた。
ラクビビエ氏の発表は、「共産主義を否認した歴代教皇たち」と題するもの。マルクスが『共産党宣言』を発表する前の1846年、ローマ教皇レオ13世は共産主義を「致命的なペスト」と批判する回勅を発した。また、1937年3月、ピオ11世がナチスと共産主義を否定する回勅を相次いで発している。ラクビビエ氏は、無神論は内面的な邪悪であるとした上で、進化論に依拠する進歩史観と家族の破壊に繋がる女性解放の動きを批判、「自由主義が労働問題を惹起して共産主義を生んだ」と締め括った。〔田口仁〕