先人の営為に学ぶ ― 岐阜で所功氏らが講演〔9月19日〕

9月19日午後、揖斐川町地域交流センター(岐阜県)で「広木忠信に学ぶ集い」が開会された。

この催しは、同地出身で若林強斎の弟子にあたる広木を検証しつつ郷土の歴史を学ぶもので、本年で40回目を迎えるという。

登壇者は、折戸夏雄氏(北方の歴史を語る会)と所功氏(京都産業大学名誉教授)。

折戸氏の演題は、「飛鳥川用水」。

当日、不覚にも電車の乗り換えに要する時間の見積もりを誤り、40分ほど遅参してしまったので、氏の詳細なレジメに基づき内容を紹介したい。

揖斐川水系の飛鳥川から引かれた同用水は、大正期に完成して以来、揖斐川町北方地区を中心とする一帯の農地を潤している。そもそも、「飛鳥」を「あすか」と読むのは何故か?サンスクリット語でアソカと呼ばれる樹木や古代インドのアショカ王に由来するなど様々な説があるけれども、折戸氏は『万葉集』の「飛鳥の明日香の里を起きて去なば君が辺りは見えずかもあらむ」に基づくのではと推測。「飛鳥川」という名の川は奈良県をはじめ各地にあるが、それらのうち、揖斐川水系の「飛鳥川」のみ「あすかわ」と読まれ、「飛鳥」ではなく「飛烏」という表記もあるが、恐らく誤伝によるものと推測される。そして、揖斐川に長良川・木曽川を加えた木曽三川は古くから水害に悩まされており、江戸時代の宝暦治水や明治期におけるヨハネス・デ・レーケ(お雇い外国人であったオランダ人)による木曽三川分流工事といった地域における治水の歴史と先人の功績を語り継ぐことは重要だと結論づけた。

続く所氏の演題は、「耕す文化の底力と活用 ― 二宮尊徳に学ぶ」。

コロナ禍により、神奈川県小田原市に居を構える所氏の西下が難しいため、VTRによる講演となった。

新型コロナウィルス感染症の流行が従来の在り方を見直す好機となったとする所氏は、ラテン語における「文化(culture)」と「文明(civilization)」の原義に触れ、前者がローカルなもの、後者がグローバルなものと関連することを指摘した上で、前者と後者を両立させる必要性を説き、〈Think globally, act locally.〉(地球規模の視野で考え、地域に即して動く)という言葉を紹介された。

そうした理念を実践する上で参照すべき存在として、所氏は二宮尊徳を挙げる。小田原出身の尊徳は、本務を全うする勤労があるからこそ、吝嗇ではない分相応の倹約が出来るようになり、そうすることで残った剰余を世間や他者のために譲る推譲が可能になり、それらは全て至誠(真心)に基づくものである、と説いた。また、こうした助け合いの精神は、就任したばかりの菅首相が掲げた「自助・共助・公助」という理念にも繋がる、と所氏は述べた。この理念が実を結ぶか、掛け声倒れになるか、今後とも注目したい。

さらに、昭和から平成を経て令和に至る皇族方のエピソードを紹介した所氏は、そこに至誠に基づく生き方や平常時と非常時の両方に備えた農業のあり方といった尊徳の思想との共通性を見出して講演を締め括った。〔三浦充喜〕

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