混迷する香港情勢を読み解く ― 東京で樋泉克夫氏が講演〔9月28日〕

9月28日午後、東京都武蔵野市にてグローバリセーション研究所(所長:五十嵐正樹)主催の講演会が開かれ、樋泉克夫氏〔愛知県立大学名誉教授〕が「迷える香港、苦悩する香港 ― “金の卵を産む鶏”はどこに向かうのか」と題して講演した。

50年ほど前、イギリス殖民地時代の香港で5年ほどを過ごした経験を持つ樋泉氏は、当時の自由で活気に満ち創意工夫に溢れた香港の庶民生活を回想しながら、香港で起こっている現象を正しく把握する前提としてアヘン戦争以来の歴史を概観し、香港返還は実態的には宗主国がイギリスから中国に変わったに過ぎなかったのではないのかとの考えを示す。

香港社会の構造を分析し、「地産覇権」「財閥治港」という言葉に象徴されるように、経済は不動産・電力・ガス・交通・流通など様々な事業を掌握している巨大企業集団に牛耳られている上に、イギリス殖民地時代から香港には職業政治家は居らず、これら企業集団のトップである有力経済人が中央政府(かつてはイギリス殖民地当局)と共に香港を運営してきた。だから我が国メディアのように、香港問題を善(=民主化を求める若者+民意)VS悪(=共産党政権+香港政府)といった類の単純な善悪二項対立で捉えていては誤解を招くだけとする。

「地産覇権」「財閥治港」構造の下で軽視されがちな庶民の怒りが、5年前の雨傘革命や現在の混乱の背景にある。雨傘革命の早期終結は中国政府と有力経済人の“手打ち”にあったとし、今回の混乱長期化の背景に両者の思惑の違いを指摘した。

今回の混乱が収束したとしても、香港社会の構造が改まらない限り、庶民の鬱屈は解消されないだろう。最悪の場合、「地産覇権」「財閥治港」の担い手が地場の巨大企業集団から中共系企業に取って代わられる可能性さえある。そうなった時、香港は“金の卵を産む鶏”であり続けることは至難だろう。苦悩する香港は「繁栄と自由の両立は可能か」という大きな問題を我々に投げかけていると、話を結んだ。

〔M・K〕

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