1 月27日〔現地時間〕、ベルギーの前国王アルベール2世陛下(85)は、シビル・ド・セリス・ロンシャン女男爵の娘で芸術家のデルフィーヌ・ボエル女史(51)を実の娘であると公式に認めた。
アルベール2世は、1959年にイタリア貴族出身のパオラ・ルッフォ・ディ・カラブリア女史と結婚し、現国王のフィリップ陛下など3人の子女を儲ける。だが、夫婦関係は必ずしも良好ではなく、1966年から1984年にかけて既婚者であったロンシャン女男爵と不倫関係にあったという。
1968年、女男爵は娘を出産。夫であるジャック・ボエル氏の嫡子として届けられたものの、アルベール2世陛下が国王に即位された後、陛下がボエル女史の実父であるという報道がなされた。さらに、2013年に陛下が退位すると、ボエル女史は認知を求めて提訴。裁判所は、陛下にDNA検査を求めていた。
これによりボエル女史はアルベール2世の庶子として認知されたが、以下に示す通り、ベルギー憲法は1991年に改正され、女子および女系の王位継承を認めるに至ったが、庶子の継承を認めていないため王位継承権は有さない。だが、王族としての礼遇および財産の相続は認められる可能性がある。
第85条
① 国王の憲法上の権限は、 レオポルド・ジョルジュ・クレティアン・フレデリック・ドゥ・サクス・コブール陛下〔初代国王レオポルド1世 ― 東山補足〕の直系、 実系および嫡出の子孫において、 長を先に、 これを継承する。
② 国王または、 これを欠くとき、 憲法に定められた場合に国王の権限を行使している者の同意なくして婚姻をした1項の子孫は、王位継承権を失う。
③ ただし、 国王または、 これを欠くとき、憲法に定められた国王の権限を行使している者により、 この失権を回復されることができる。 これには両議院の同意を必要とする。(武居一正氏訳)
我が国の皇室典範においても、皇族としての礼遇を受けるのは嫡出子に限るとされており(第5条・第6条)、庶子に関する規定は存在せぬが、その倫理的当否はともかくとして、あり得る可能性として考慮に入れる必要があるのではないか。〔東山邦守〕