我が国では、刑法において堕胎を犯罪と規定する(212条~216条)一方、昭和23年7月13日に施行された優生保護法において、意に反した性交渉の結果として妊娠した場合や遺伝的理由によるもののみならず、経済的理由による人工妊娠中絶を認めた。この結果、これまでに約4000万人、平成28年に限っても約17万人の胎児が生れる前に命を絶たれたという〔厚生労働省調べ〕。
こうした現状に対し、平成26年に始まったのが「命の行進・マーチフォーライフ」。優生保護法が施行された日付に近く、「産みの日」と「海の日」の語呂合わせにも因んだ7月の第3月曜日に行われている。その主催団体〈ファチマ聖母の会・プロライフ〉の主催による講演会「カトリック復興の集い」が、12月1日午後、曙町児童館(東京都文京区)にて開催された。
最初に、マーチフォーライフ実行委員会の池田正昭・美貴夫妻が「『マリアのお産運動』はじまります!」と題してスピーチ。四人の子女を産み育てた経験をもとに生命の貴さを訴えた。
続いて、本誌執筆者のポール・ド・ラクビビエ氏〔里見日本文化学研究所特別研究員〕が「カトリックの結婚」と題して講演。結婚ととは天主からの恩寵として与えられる秘蹟であり、単なる男女の結合という近代的理解は誤っていると強調した。

熱弁を振るうラクビビエ特別研究員
最後に、ビルコック神父〔聖ピオ十世会〕による「プロテスタント主義とその政治的な帰結について」と題するVTRを視聴。ルターは聖書の自由解釈を強調したが、それは伝統的に形成されてきた正統な解釈を否定するものであり、そうした姿勢は個人を絶対化する思想、ひいては資本主義・唯物論・実存主義といった潮流を生み出したという神父の指摘には、信仰の相違を超えて納得できる部分があった。〔M・K〕