『国体文化』(平成24年1月号)巻頭言
『読売新聞』(平成二十三年十一月二十五日朝刊)などによれば、宮内庁は首相を始め政府首脳に対し、女性皇族を当主として戴く「女性宮家」創設について検討すべきと要請した模様だ。男性皇族の減少及び高齢化が進む中、女性皇族が御結婚なされた後も皇族として公務などに携はつて頂かうとするもので、秋篠宮家の眞子内親王殿下が御成人なされた今日、十二分に検討する余地はあらう。
この「女性宮家」創設に関しては、「女系天皇」即位に繋がるものとして少なからぬ反対論が存在する。弊誌でも何度か取り上げたやうに、吾人は、たとへ「女系天皇」が即位したとしても、国民が天皇を扶翼し奉らうとする意思を有する限り、政治機構や経済機構を下支へする「国家の究極的基盤体」すなはち「国体」の変革にはあたらないと確信してゐるけれども、皇位継承原理の変更を伴ふことは確かだ。
かやうな重大問題については、天皇陛下の御聖断を仰ぐべき ― そのためにも、「皇室会議」の拡充が強く望まれる ― であり、臣子たる国民は(女系天皇の公認・旧皇族末裔への皇籍付与も含めた)あらゆる選択肢を提示し、公論を尽くすことしかできぬのではないか。その際、如何なる形であれ、大御心を制約するが如き言動は厳に慎まねばならぬ。天皇の御位に即かれ、国家・国民をしろしめす広大なる皇恩に感謝こそすれ、皇位継承を巡り「~して頂きたい」などとマスコミを通じて発言することは、尊皇心に基づく行為であつたとしても許されない。
吾人は、理義に基づいて冷静な議論を積み重ねて参りたい。平成二十四年、皇紀二千六百七十二年においても、読者諸兄姉の御指導・御鞭撻を賜りたく、この場を借りて御願ひ申し上げる。