浅慮極まりない国連女子差別撤廃委員会

「国体文化」平成28年4月号 巻頭言

去る三月七日に発表された国連女子差別撤廃委員会の報告書が大きな波紋を呼んでゐる。所謂「従軍慰安婦」を巡る昨年十二月の日韓合意に関する批判もさることながら、最終的には削除されたものゝ、男系男子による皇位継承を「女性差別」として皇室典範の改正を求める内政干渉まがひの記述も当初の案には存在したといふ。

皇族男子が減少し、側室制度も存在せぬ今日、男系男子による皇位継承といふ原則を再考すべきことは確かである。本誌上においても、①男系男子による継承の限界を踏まえ、皇族女子にも国家統治といふ国体を支へる神聖な義務を担つて頂くことはできないか、②女系も認めることにより皇統断絶の中長期的な可能性を減らしておくことが必要ではないか、③旧皇族末裔に対する皇籍付与を認めるとしても、皇位継承の原則を改める際には国民が議論を尽くした上で天皇陛下の御聖断を仰ぐべきではないか、と論じてきた。けれども、一連の議論は、①天皇の子は男女を問はず皇胤であり、かつて女帝が存在したことからも明らかなやうに、皇族の身分にある限り皇位を継承し得る、②君民の血統が一体である日本においては、女系継承を認めても統治機構としての国家に先立つ民族共同社会たる国体が破壊されることはない、といふ国体の本質に基づくもので、近代の権利観念を背景とする女性差別解消論とは全く異なる。

なほ、この案文作成における中共の関与を云々する報道も見られるが、最終的に責任を負ふべき同委員会の委員長が林陽子なる日本人弁護士であることを忘れてはならない。札付きのフェミニストとして知られる林は、内閣府男女共同参画会議の調査会委員などを務めた後、福田康夫政権下の平成二十年一月、女子差別撤廃委員会の委員に就任したといふ。国際的謀略と批判することは重要だが、このやうな人物を政府の要職に任じ、国際機関の委員として活躍させてきた歴代政権の責任を追及することが先ではないか。
(金子宗徳)

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