中国を巡る最新情勢 ― 東都で千田会〔9月6日〕

9月6日の晩、文京シビックセンターで千田会主催の講演が開催され、澁谷司氏(アジア太平洋交流学会会長)が「進む中国包囲網~米3空母がインド・太平洋に集結」と題して講演した。本年3月に拓殖大学を退職された渋谷氏は、「私の講演は参加費の金額に見合ったものでしょうか」という問いかけに始まり、先に亡くなられた台湾の李登輝元総統に関する思い出を語られた後、本題に入った。その概要を以下に示す。

中国への投資を奨励する意見もあるが、近年、中国経済は悪化しており、今年5月28日に明らかになった経済数値によると、中国人1人当たりのGDPは3万元(約45万円)、中間層の月収は約3000元(4万5千円)~4000元(6万円)で、いわゆる貧困層が多い。悪化の原因は、習近平政権が社会主義へ回帰したためであり、2015年に導入した民間企業と国有企業とを統合する「混合経済改革」の失敗である。また、本年は長江や黄河の流域における降水量が多く、各地で洪水が多発している。加えて、「新型コロナ」を始めとする感染症の流行に加え、アフリカから発生したサバクトビバッタが飛来するなどしており、食糧危機が起こることも懸念される。

また、「戦狼外交」を展開する習政権は四面楚歌の状況にあるが、国内における権力闘争や自国の弱体化を外交面での強硬姿勢でカバーしているのかもしれない。こうした外交姿勢は、最終的には中国軍による軍事行動に繋がりかねぬが、「台湾侵攻」については、台湾が一定の対抗策を採っていることから、実行するか否かは微妙である。

これまで米国は中国を甘やかしてきたが、トランプ政権は強硬路線を採っている。米国はソ連時代の対ソ戦略から中国との関係を密にしていて、特に経済の発展による中国の民主化を期待していたが、結局「民主化」はなされなかった。このことは、2012年に習近平総書記の登場で経済大国・軍事大国となり、「中国的世界秩序」構築へと変貌していった。さらに、中国が知的財産権などの盗み出したため、米国は中国潰しへと方針転換した。

習近平を「全体主義者イデオロギーの信奉者」と見なすトランプ政権は、本気で中国共産党潰しを考えている。米国は、同盟国に「対中包囲網」を求める一方、軍事的には西太平洋に2~3の空母群を展開している。これに対して、中国は8月に北戴河会議で「戦狼外交」をやめることを決定し、外相などをヨーロッパ5か国やシンガポール、韓国に派遣しているが、他方で中国軍が西沙諸島にミサイルを試射するなど、決して気を抜けない状況でもある。

以上、中国を取り巻く状況に関する分析が語られ、今回も有意義な講演であった。〔千田会事務局・渡辺雅仁〕

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