台湾の政治的混乱と我々のなすべきこと

「国体文化」平成26年5月号 巻頭言

中共政府とのサービス貿易協定の批准を巡り、台湾の政治的混乱が続いてゐる。この協定は平成二十二年九月に発効した「両岸経済協力枠組協議」(=自由貿易協定)の内容を具体化するもので、締結が実現すれば両者の経済的結びつきは現在以上に強まる。中華民国の亡命政府といふ政治的建前ゆゑ、我が国を含む大半の国家と正規の外交関係を持つことができず、経済のグローバル化に取り残されつゝある台湾は、この枠組協議をモデルとして他国とも自由貿易協定の締結を目指してゐるといふ。しかしながら、台湾および中共の経済面における一体化が進めば進むほど、台湾が中共の実質的支配下に置かれる可能性は強まる。

さうした危険性が指摘されてゐるにもかかはらず、馬英九総統および与党の国民党は、協定の締結を急ぐあまり、逐条審議といふ当初の公約を踏み躙る形で立法院(国会)における審議を打ち切つた。このやうな国民党政権の行動に対し、採決の阻止を目指す学生たちは去る三月十八日晩に立法院の建物を占拠した。その後、王金平立法院長が協定の審議延期を確約したため事態は正常化に向つてゐるが、これで全面的解決といふわけではない。

沖縄に隣接する台湾の政治情勢は北東アジアの国際秩序にも大きな影響を与へかねない。さらに言へば、台湾の人々は、昭和二十七年四月二十八日にサンフランシスコ講和条約が発効するまで日本国民であり、その後は民族自決の原理に基づき中華民国に代はつて新たな国家を形成する潜在的権利を有する。このやうな地政学的意味や歴史的経緯を踏まへ、台湾人としての国民的主体性を取り戻さうとする彼らの行動を我々としても何らかの形で支援していくことが求められてゐる。
(金子宗徳)

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