消費税率引き上げにあたつてなすべきこと

「国体文化」平成25年11月号 巻頭言

去る十月一日、安倍晋三首相は、消費税の税率を平成二十六年四月一日から八パーセントに引き上げる意向を明らかにした。これにより約八兆円の税収増を見込んでゐるといふ。また、増税に伴ふ景気減退を避けるために五兆円規模の経済対策を行ふ意向も表明した。その多くは復興事業や公共投資に費やされる模様だが、果たして真の「国土強靱化」に繋がるか使途を注視せねばならぬ。

現時点における我が国の政府債務残高対GDP比率は二百パーセントを超えて大東亜戦争敗戦直後と同じ水準に達し、今年度予算においては約九十二兆円のうち約二十二兆円が国債の償還や利払ひに充てられてゐる。かうした厳しい財政情況が続く限り、国際金融資本による「日本売り」の可能性は高まる一方だ。後代にツケを遺さぬやう増税は已むを得ないものゝ、一般国民にのみ犠牲を強ひるやうなことがあつてはならぬ。法人税率を引き下げて企業活動を活性化させるといつても、その成果が日本人従業員に還流しなければ無意味だ。また、法人税の減税はTPP(環太平洋経済協力)と共に外資導入による経済活性化の呼び水として期待されてゐるが、外資の参入は国際金融資本の浸透と一体であることを忘れてはならぬ。

増税による歳入の拡大には限界があり、行政サービスの見直しによる歳出の抑制が必要だ。とりわけ、今年度予算において約二十九兆円を占める社会保障費の増大に歯止めを掛けねばならない。安倍首相におかれては、外国人の生活保護を打ち切るだけでなく、現役世代並みの収入を有する高齢者の自己負担率を現役世代と同じ水準に合はせるなど、次世代の日本国民を育成するといふ見地から、既得権益に囚はれぬ思ひ切つた施策を断行して貰ひたい。
(金子宗徳)

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