加藤友三郎を再評価する ― 東京で白石仁章氏が講演〔11月30日〕

11月30日夜、文京区民センターで白石仁章氏(外務省外交史料館課長補佐)が「日本外交における加藤友三郎の功績」と題して講演した(主催:千田会、共催:加藤友三郎元帥研究会)。

白石氏は、第二次世界大戦中のリトアニアで、ユダヤ系難民にビザを発給し、「東洋のシンドラー」と称された外交官の杉浦千畝の研究で知られるが、大正時代の海軍軍人・政治家である加藤友三郎の日本外交における功績について予てより深い関心を寄せている。

そもそも、歴代首相の中で加藤の知名度は高くない。加藤の病死により内閣が1年弱しか続かなかったことが大きな理由と考えられるが、内閣の歴史的評価はその長短によるものではなく、その功績によるべきものではないか。

その点において、加藤内閣はより高く評価されて然るべきだ。加藤内閣は短命ながら、陸海軍の大胆な軍縮やシベリア撤兵を実行したばかりか、日ソ国交樹立の先鞭をつけるなど外交面に限ってもその功績は極めて大きい。これらの功績は加藤が海軍大臣として首席全権を務めたワシントン会議(正式にはワシントン海軍軍縮会議)と関連が深い。従って、ワシントン会議から加藤内閣までの日本外交を再検討することは、日本外交の1つの転換点の存在を明らかにするとともに、外交における指導者の役割の重要性を示すことになる。このような視点に立って、第一次世界大戦後の日本を取り巻く国際環境、ワシントン会議の概要、ワシントン会議全権としての功績・評価、首相としての功績・評価について、初学者にも分かりやすく説明し、加藤外交は第一次世界大戦を経て当時の先進国の外交政策が帝国主義的な「旧外交」から国際協調主義的な「新外交」へ移行する先駆けであったと論じた。

戦争がなく平和な時代を過ごしている現在だからこそ、大きな戦争の合間に平和な時代を築いた加藤友三郎首相の功績を冷静に、客観的に再評価をするべきではないだろうか。〔千田会代表・千田昌寛〕

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