「明治の精神」を問い直す ― 東京で国体文化講演会〔12月7日〕

12月7日夕方、学士会館(東京都千代田区)において第56回国体文化講演会が開催され、本誌の金子宗德編集長が「『明治の精神』を問い直す」として講演した。

「明治150年」にあたる本年を締め括るにあたり、改めて「明治の精神」を問い直したいと前置きした金子編集長は、福澤諭吉と西郷隆盛という二人の人物に焦点を当てる。

福澤諭吉

「近代市民革命」としての明治維新を象徴する福澤は、「人の身を安楽にして心を高尚にする」ことを以て「文明」とし、それを実現するべく「智徳の進歩」を目指した。「智徳」は相補うものであるが、初期の福澤はドグマ化しかねない「徳義」より「智恵」を重視し、『学問のすゝめ』を執筆した。同書において、福澤は経済的自立に繋がる実学を重視したが、個人として自立した暁には「人間交際(=社会)」に貢献することも忘れてはならないと説いていたことも指摘。

西郷隆盛

一方の西郷は、葦津珍彦や影山正治によって「復古即革新」としての明治維新を象徴する人物であり、福澤と対極にあるとされてきたが、西南戦争の直後に「賊軍」とされていた西郷を擁護する『丁丑公論』を執筆していたことなどを指摘した金子編集長は、両者は意外に近い感覚を有していたと指摘。

続いて、「明治の終わり」に目を転じた金子編集長は、日露戦争に勝利し、不平等条約を改正したことで対欧米独立戦争を完遂した結果、国家に対する帰属意識が薄まり、個人主義や社会主義の擡頭を招いたとした上で、そうした国民意識の革正を目指した人物として田中智學について言及。日蓮仏教の近代化を図ったことでも知られる智學は、『国体の権化 明治天皇』〔大正元年10月27日〕などを執筆したり、明治天皇御製講座を開催するなど、明治天皇の御聖徳を国民に伝えることで、「道」としての「国体」を個人主義を乗り越えるものとして示そうとした。

最後に、「『明治200年』に向けて」として、「明治の精神」を評価するにあたっては、先人の評価を尊重しつつ、現代的視点に立つことが必要とする金子編集長は、後世に伝えるべきこととして2つの点を挙げた。

第1に、武家支配によって歪められた「政体」を天皇を中心とする建国以来の「国体」に適うべく正したという先例に倣い、「政体」の歪みが生じないよう行政機関を監視すべきである。

第2に、知徳を兼ね備えた自立的主体として社会に貢献する国民を形成しようとする一方で、己の権利を強調するあまり、忠孝の徳性を軽視するような動きは否定されたことに鑑みれば、「権利」という美名の下、伝統的に形成されてきた社会秩序を破壊するような動きとは徹底的に戦わねばならない。

単なる歴史回顧だけでなく、将来に対する指針が示され、年の終わりに相応しい講演会であった。〔M・K〕

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