歴史を「横割り」で見る ― 東京で昭和12年学会研究発表大会〔11月10日〕

11月10日午後、ベルサール神保町で昭和12年学会・第2回研究発表大会が開催された。

今回は特別講演として、日本近現代史の泰斗である東京大学名誉教授の伊藤隆先生をお招きした。「私の見る昭和12年」を演題として、日本が大戦に至る経緯の中で避けて通ることのできない、中国、ドイツ、アメリカ、ソ連国際情勢の状況をお話し頂いた。

次いで第1セッションに移り、倉山満、金子宗德、ポール・ド・ラグビビエの各氏が発表を行った。

倉山氏の「昭和12年の宮澤俊義」に続き、金子氏(里見日本文化学研究所所長)が登壇し、「昭和12年の国体論」と題して発表。事実としての「国体」と解釈としての「国体論」とは区別されるべきで、「国体論」は様々なものがあるが、「国体」の定義は定まっていない。さらに、天皇機関説事件を取り上げ、政争の具として国体に関する学説が利用されてしまった事例を紹介した。

続くポール氏の講題は「1937年のアクシオン・フランセーズ」。アクシオン・フランセーズは20世紀に起こったフランス王党派の大運動である。思想家モーラスを中心に展開され、その保守主義の思想は現代に至っても引き継がれている。革命的な思想が浸透しつつある現代日本にとって、モーラスの思想から学ぶものは大きいとポール氏は結論づけた。

休憩後、第2セッションとなり、宮田昌明、江崎道朗、宮脇淳子の各氏が発表した。

宮田氏の講題は「近衛内閣と支那事変」。主に国内の政治・産業体制に関して論じた。近衛は戦争前に国民の生活を充実させるため、「厚生省」の設置・国民健康保険法の制定などを行った。また近衛新体制では、民間の戦争協力を得るため、労使協調主義であるコーポラティズムを採用したとも指摘した。その後、江崎氏が「中国共産党とトーマス・ビッソン」と題して、宮脇氏が「昭和12年のモンゴルと徳王」と題して発表。

これまでの学会では、それぞれの学問が独立し干渉しあうことのない「縦割り」が日本の伝統であったが、当学会はその弊害を排除しあらゆる分野に目を配る「横割り」の学会として創設されたものであり、今後も活動予定である。

また、公開研究会として、今回登壇された先生のさらに詳しい発表を、令和2年の1月から5月まで計5回開催予定である。是非とも御参加いただきたい。〔山田忠弘〕

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