去る十月三十一日、赤坂御苑で行はれた園遊会において前代未聞の不祥事が発生した。
招待を受けた参議院議員・某が天皇陛下を呼び止めたあげく、書状を手渡すといふ挙に出たのである。書状には福島第一原発事故を巡る政府の対応などを批判する内容が書かれてゐたとのことで、足尾銅山の鉱毒被害について明治天皇に直訴した元衆議院議員・田中正造を連想する者もあらうが、日頃より尊皇家として知られてゐた正造と選挙で新左翼勢力の支援を受けたといふ某を比べることじたいナンセンスだ。その上、巻紙に書かれた文字は正視に堪えず、封筒にすら入つてゐないなど、某の幼稚さと教養のなさを示す代物であつた。その後、騒動が大きくなったことに慌てたのか某は謝罪したものゝ、議員辞職の意思はないとしてをり、その本心は窺ひ得ない。
某に対し、参議院は議長による厳重注意と皇室行事への出席禁止といふ処分を下した。かゝる徒輩は選良たる議員としての適格を欠いてをり、問答無用で除名処分とすべきであるが、某が処分撤回・地位保全の訴訟を起こした場合、残念ながら某の云ひ分が認められるだらう。
さうである以上、このやうな不祥事が起こらぬやう、宮内庁及び警備当局は万全の対策を取るべきだ。某の如き分子を天皇陛下に近づけることはおろか、園遊会に招待することじたい言語道断である。今回は手紙で済んだからよいものゝ、これが兇器の類だつたらどうなつてゐたか。天皇皇后両陛下のみならず、政府高官や各国の駐日大使などが多く集まる場において、テロ事件が発生するやうなことがあれば、我が国の威信は地に堕ちるであらう。
金子宗德(かねこ・むねのり)里見日本文化学研究所主任研究員