安倍首相は皇位継承問題の抜本的解決に全力を尽くせ

「国体文化」平成26年8月号 巻頭言

一部マスメディアの報道によれば、安倍内閣は、皇族女子が御結婚に伴つて皇籍離脱された後も従前通り御公務を続けられるやう、「皇室輔佐」や「皇室特使」の創設を検討してゐる模様だ。

そもそも、この「皇室輔佐」や「皇室特使」とは役職なのか身分なのか。役職といふなら、特別職国家公務員として任用され、給与が支払はれることにならう。当然のことながら、所得税の課税対象となる。これが皇族の御公務を御分掌して頂く方々に相応しい礼遇であらうか。一方、身分といふなら、現行憲法には「華族その他の貴族の制度は、これを認めない」(第十四条二項)と定められてをり、皇族でも国民でもない新たな身分を創設するには憲法を改正せねばならぬが、それは極めて非現実的な議論だ。このまゝ行くと、皇室と国民との間に身分とも役職ともつかぬものが置かれることにならう。

その上、この案は皇族女子が御結婚により皇族を離れることが前提とされてをり、皇族の減少に歯止めを掛けるものではない。現時点において皇族は二十名、そのうち未婚の皇族女子は(今年秋に御結婚なさる予定の典子女王殿下を含めて)八名であり、今後にわたつて皇族の減少が予想される。

この流れを如何にして止めるか。①女性宮家を創設し、さらには女系による皇位継承を可能とする、②旧皇族末裔の男系男子に皇籍を賦与する、③皇族女子に旧皇族末裔の男系男子と御結婚をして頂き宮家の継承を図る、これら三つのいづれかしかあるまい。いづれにせよ、残された時間は僅かである。安倍首相におかれては、今上陛下の御内意を早急に承り、皇位継承問題の抜本的解決に向けて全力を尽くして頂きたい。
(金子宗德)

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