1月17日夜、文京シビックセンター(東京都文京区)にて第59回国体文化講演会が開催され、宮田昌明氏(里見日本文化学研究所客員研究員)が「近代日本の台湾・朝鮮統治」と題して講演を行った。内容は、台湾・朝鮮それぞれの統治の実情を細かに見つつ、その成否を比較して日本の海外領統治の理解を深めるものとなった。
まず宮田氏が取り上げたのは台湾統治。日本の統治の成功の前提として清朝時代の漢民族による統治システムの整備があることを指摘した。また、一面的に日本統治の成果を取り上げるだけでなく、台湾原住民による昭和五年の抗日蜂起「霧社事件」についても詳細に解説がなされ、宮田氏はこれを、偶発性の事件ではなく計画された無差別テロであると語った。
台湾統治と比較して成果を上げられなかった朝鮮統治については、朝鮮半島における貨幣経済の未発達や支配層(両班)の育成失敗等をあげて解説がなされた。また満洲事変が朝鮮人に対して「日本に抵抗しても無駄だ」という印象を与える朝鮮統治の大きな転機となったことを指摘。さらに、日韓両国間の問題となっている徴用工や慰安婦に関連する事項として国民徴用令の解説にも時間が取られ、参加者にとって問題への理解が深まる機会となったと思われる。
宮田氏は講演を通して今日に至るまで「日本は台湾より朝鮮半島を優遇している」ことを指摘したが、これは台湾統治の成功と親日国台湾というイメージから意外と見落としがちな事実であろう。台湾人の優しさに日本人はどこか甘えてはいやしないか?と私自身も考えさせられた。〔清原弘行〕