立場の隔たりを認めつつ学術的基礎を踏まえた建設的議論 ― 大阪で「皇室の弥栄を祈る」討論会〔12月22日〕

12月22日午後、國民會館武藤記念ホール(大阪市中央区)にて、第二回「皇室の弥栄を祈る」討論会が開催された。皇室制度の専門家が登壇し、皇位継承問題を中心として現代の皇室を取り巻く課題について討論を交わした。

司会の野崎眞夫氏による開会の挨拶と講話に続き、高森明勅氏が「皇位の安定的な継承のために」と題し、女子皇族に皇位継承資格を付与することによって、皇位の安定的な継承を実現すべきだと提案した。高森氏は、これまで男系男子による皇位継承が可能だったのは側室制度があったためだとし、近代以降に皇室で一夫一婦制が定着したことによって、男系男子による皇位継承は制度的基礎を喪失したと述べる。これを換言すると、皇位継承資格者から庶子を排し、嫡子に限定したことを含意する。こうして、男系男子による皇位継承は、その基礎を喪失したうえ、これまで前例が無かった「嫡子かつ男系かつ男子」という厳格過ぎる皇位継承条件に規定されることになった。こうした構造的問題から、皇位継承資格者の減少は必然であり、皇位継承条件を緩和すべきだと指摘され、女子皇族にも皇位継承資格を付与すべきだとされる。

続いて、新田均氏が、「皇位の父系継承の意義」と題し、伝統的な皇位継承原理である父系継承の意義を重視すべきだとする立場から、高森氏の皇位継承論に批判を提起した。新田氏は、家族共同体の世襲原理を「氏」と「家」の二つの類型に区分する。「氏」は、祭祀の継承に力点を置いた世襲原理であり、一族の始祖と血統的に直結していることを基礎とする。すなわち、世代を遡行し、父系祖先を辿ることによって、一族の始祖に行き着く、一連の系譜を重視する。他方で、「家」は、家職・家産の相続を主眼とする世襲原理であり、継承にあたって能力を重視し、血縁関係に拘泥しない。新田氏は、皇祖皇宗と血統的に直結していることに正統性があり、祭祀の継承を行う皇位継承は、あくまで「氏」に立脚すべきだとし、「氏」の世襲原理に照らせば、「別の父系への移行」と受け取られかねない女子皇族に皇位継承資格を付与する議論に警戒感を示す。

続いて、パネルディスカッションに移り、村上政俊氏と廣瀬重見氏が新たに登壇した。村上氏は外交官時代の知見を交えつつ、日本と欧州の君主制の異同について述べた。廣瀬氏は、これまで皇室への敬慕で一致していた保守派が、いわゆる男系・女系問題によって分断されていることへの懸念を表明した。

そして、ふたたび女子皇族への皇位継承資格付与の是非が論点となり、高森氏と新田氏の討論が中心となった。高森氏は、「氏」の世襲原理を重視する新田氏に対し、皇位継承において「氏」の世襲原理が中心になったのは、中国の男系主義の影響によるものであり、古代日本では男系・女系双方の世襲を肯定する双系主義が主流だったことを勘案すれば、「氏」の世襲原理は日本的制度とはいえないとする批判を提起した。これに対し、新田氏は、中国の影響を受けないで成立した男系主義が世界には幾つもあり、「氏」の世襲原理が中国の影響によるものだと即断できないとし、また古代日本で実際に双系主義が主流だったかについても、疑問点があると応答した。

皇位継承問題は喫緊の課題だが、その検討を進めるとなると、一方的な主張の応酬になりがちで、建設的な議論になり辛い。だが、この討論会では、立場の隔たりはあれど、冷静で学術的基礎を踏まえた議論を実現しようとする配慮が随所で見られた。こうした機会を増やすことで、皇位継承問題についての議論を深化させることができるのではないだろうか。

〔湯原静雄〕

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